2024年6月12日
運営
※以下、2024年6月10日発売の山と渓谷社「Rock&Snow」掲載記事からの転載です。
TOPOSプロジェクトのスタート
2024年5月、株式会社Sunborn(サンボーン / 以下、Sunborn)から、スマートフォン(iOS / Android)で利用できるデジタルトポアプリ「TOPOS(トポス)」をリリースしました。両OSのアプリストアからいつでもダウンロードでき、トポの閲覧以外はすべて無料で利用できます。TOPOSは、全国の岩場や課題のデータベースを持ち、個人のクライミング記録の他、クライミングを中心としたクライマー同士のコミュニケーションや、岩場のローカルから情報を発信するといったことを可能にします。
これまで国内にはクライマーのスタンダードとなるようなアプリが存在しませんでした。情報発信には主にSNSが利用され、情報がストックされず流れてしまっていました。一元化された情報がないことで、どこに何の情報があり現在どうなっているのかを把握することが困難で、共通認識を持ちづらく、活性化しづらい状況がありました。TOPOSプロジェクトはこれらの課題を解決するためにスタートし、この度最初のバージョンを公開するに至りました。
TOPOSはまだ始まったばかりのプロジェクトです。これからクライマーのニーズを取り込みバージョンを重ね育てていきたいと考えています。TOPOSが利用されることで、アウトドアでのクライミングのデータベースとして情報が豊富になります。データが集まることで、
岩場への興味関心が増え親しまれやすくなる。
クライマーの活動が見えるようになることでそれに刺激を受けてより行動が促され活性化する。
岩場のローカルからは適切に情報が発信され地域を配慮した継続性のある活用につながる。
結果としてこのような状況が生まれることを目指しています(現状はまだ有料で閲覧できるトポ画像自体は小豆島の赤嶽の岩場のみと限定的です。順次公開予定です)。
TOPOSの成り立ち
TOPOSを企画開発・運営するSunbornは、システム開発の請負を主な事業とするIT企業で、様々な業種の事業会社をクライアントに、業務システムやWebサービス、アプリなどの開発を行っています。
<基本情報>
社名 株式会社Sunborn (Sunborn Inc.)
所在地 〒103-0023 東京都中央区日本橋本町4丁目8−15 ネオカワイビル 6F
設立日 2011年9月21日
代表者 CEO & Founder 北原 豪
資本金 2,000万円
代表の北原を始め社内にクライマーが複数在籍し、2018年より足掛け7年、本業の傍らで地方創生プロジェクトとしてクライミングイベント「瀬戸内JAM」を主催してきました。イベントの中では新規クライミングエリアの発表や、地域へのクライミング文化醸成を目指した交流を行うなど、地域に根を下ろした活動を行っています。将来的には国内・インバウンドともに、アドベンチャーツーリズムによる観光の醸成を目指し、地域の企業や行政とも連携しながら地域を盛り上げる活動をしています。
他、2020年にコロナ禍で廃業した東京・葛西のクライミングジム「ROCKLANDS」の再生に、北原をはじめ社内メンバーも加わり取り組み、現在も継続的に経営に携わっています。更に、2022年には「一般社団法人小豆島クライミング協会(以下、SCA)」の設立メンバーとして北原が関わり、小豆島のクライミングや地域振興に会社としても協力しています。
デジタルトポの構想は、恐らくITに関わる仕事をされている方(特にエンジニアの方)であれば全員一度は考えるのではないかと思います。IT的な視点では、データベースはサービスの根幹で、データは利活用されるべきものであり、「もっと便利に」で著しい成長を続けているITの土台は、データだからです。当然のようにSunborn社内でも以前から同様の構想はありました。しかしビジネスとして考えるには難しく、構想のままで終わっていました。これまでの岩場の成立の経緯や国内の岩場を利用する人口を考えると経済合理性がなく、また、外様からただ利便性を提供することにも自分たちがやる意義が感じられなかったからです。
これが具体化に動き出したきっかけは何か。それはクライミングを起点に地域に根ざした活動を開始していく中で生まれました。合わせて、クライミングジムを通して競技としての将来を見て、更にその先に文化としての将来を見始めたことも大きな動機になっています。足元の経済合理性はまだ見えないですが、クライミングが健全に発展していった未来をイメージしたときには、そこに全国の岩場を網羅した情報のプラットフォームがあるべきものだと実感しています。
現状の課題感
直近で解決していきたい課題は大きく3つあります。
①情報の最新性、正確性を保つインフラがない
アウトドアのクライミングが発展していく過程では、岩場の情報が利活用されることが大切です。そのために重要なのは情報自体の信頼性。信頼性があってはじめて情報の利活用の流れが生まれます。しかし現状では、トポ自体でも古いものがあったり、ローカル情報や注意事項などもその精度、鮮度が不明で、どこを参照すべきか自体もわかりにくい場合があり、混乱が起こりやすい状況があります。例えばSNSで流れてきた情報を見ても、それがその後どうなったかがわからなかったり、そもそも見逃していたりという状況も多々発生しています。これはトラブルの元にもなっています。
②ローカルの活動が正しく認知評価されていない
全国の岩場の中では、ローカルの任意の団体がエリアの保全や地域とのコミュニケーションにつとめている岩場があります。しかしローカル団体は基本的にボランティアで運営されていることが殆どで、予算的にも岩場の整備に必要な実費以上の確保は難しく、それぞれの団体がHPを制作したり会員や決済の仕組みを作ることは難しいのが現状です。できているケースはあっても、ユーザー目線で見るとそれぞれの仕組みのインターフェースがどうしてもバラバラになってしまい、使い勝手が悪くなってしまっています。協力したい場合でもしづらい状況が生まれてしまっています。
③クライマーのクライミング活動情報が分散してしまっている
アウトドアのクライミングを楽しんでいるクライマーの活動は、現状SNSや個人のブログで公開されています。これは仲間と楽しむ範囲では十分で外野がとやかく言うことではないですが、SNSは情報が消費されるのみで流れていってしまい、資産として溜まっていきません。もし公開する場所が一元化されていたら、岩場がどれだけ利用されているのかや、どれくらいクライマーがいて、それぞれどんなクライミングをしているかの記録や履歴が情報としてストックされ資産化されます。クライマーの活動のエネルギーが可視化されるとも言えます。このクライミング活動情報の資産があると、後から参加してくる人たちに示すことができます。今後アウトドアのクライミングが盛り上がっていく過程で、大きな相乗効果が生まれてくると考えられます。
TOPOSが実現できること
現状の課題を解決するために、それぞれ以下の機能を作りました。
①アウトドアのクライミング情報の一元化と更新
最新ルート情報の反映、エリアのニュース、注意事項の発信・更新の機能
②クライミング活動の記録とコミュニティ醸成
自分のクライミングの記録(プロジェクト、アテンプト、岩場へ通った履歴)と、他人のクライミング記録の閲覧、リアクションの機能
③ローカルの活動支援や情報の拡散
各種団体のローカル情報の更新、協会運営、トポ販売、会員費徴収を支援するシステムとしての機能
他、基本機能として以下の機能があります。
タイムライン:フォローユーザーの動向、エリアの最新情報入手
エリア・ルート検索機能:地図から探す、フリーワード検索、地域・ルート種類などからの絞り込み
トポ閲覧機能:購入、ダウンロード
情報閲覧機能:岩場情報閲覧、壁・岩情報閲覧、課題情報の閲覧、ユーザー情報の閲覧
ダッシュボード:各種情報や記録のサマリーの確認
また、これらの機能を前提に、トポの提供パートナーとして本誌を刊行する株式会社山と溪谷社(以下、山と溪谷社)とパートナーシップ契約を締結しました。山と溪谷社の刊行している「日本100岩場」シリーズ全5巻を提供していただきます。これによって、全国の岩場情報が大きくカバーできます。トポは有料ですが、岩場のインデックスとしては無料で利用できます。日本100岩場シリーズは紙の書籍の他、デジタル書籍としての販売もありますが、今後はこれまで実現が難しかったデータとしての利活用や、情報の更新や追加も各岩場、各課題個別に行っていくことができます。
トポに関しては上記シリーズ以外にも、各ローカル団体や出版を行う事業者からも発刊されています。それらはローカル活動の大切な原資になっていたり、開拓活動の原資にもなっています。こういった情報も、それぞれの活動をむしろ活性化できるような関係をつくり、TOPOSとして提供を受けていけるように、少しずつ理解を得られるよう活動していきたいと考えています。
Sunbornが取り組む意義
Sunbornについては先述したとおり、代表の社長をはじめ、社内にクライマーが複数在籍し、ジム経営や岩場の開拓・整備、地域活動などにも関わってきました。それぞれクライミング競技者としての活動はありませんが、社会人クライマーとして10年以上の経験があります。中には毎週のように岩場に通い詰めている者も。自分たちがヘビーユーザーだからこそ、できることがあると考えています。例えば、社内メンバーも経営に関わるROCKLANDSでは、その再生後、「CATALYST FOR LIFE - クライミングは人生の触媒だ -」をフィロソフィーとして、売上の一部を岩場の活動に寄付することを続けています。これは一人のクライマーがクライミングを続けていくときに、室内だけでなく外の世界に目を向ければ、無限に楽しみが広がっているというメッセージと、ジムはその入口でありコミュニティでもあると考えているからです。
そして大きいのはやはり2022年にSCAというローカル団体の立ち上げに関わったこと。法人設立や、立ち上げ時のクラウドファンディング、HP制作、会員制度の運用などを行いながら、地域の地権者や自治体、ローカル団体とのコミュニケーションを行ってきました。こういった中で、単に利便性という機能を提供する以上の意義を、自分たちの体験から実感したことです。
こういった意義を感じた中で、14期目になるIT会社として、これまで専門性や経験を培ってきたこの能力を活かしたいと考えました。
なぜ今はじめるのか
デジタルトポというコンセプト自体は昔から存在していて、世界ではある程度デファクトスタンダードになっているサービスがあると思います。すべてが無料で提供されているものもあれば、既存の出版されているトポとは別に運営されているサービスもあります。しかし、先に挙げた課題は現状で全く解決されていません。これはなぜなのか。それはトポをはじめクライミングに関する情報の作られた背景が抜けてしまっているからだと思います。トポがどのように、誰によって作られているのか。そもそも、各課題がどのようなプロセスで生まれたのか。課題がどのように楽しまれ、誰によって維持されているのか。そして、岩場の所有者は誰なのか。こうした一つ一つの要素があって初めて岩場が成り立つという前提が欠けていることが、根本的な問題だと思います。
デジタルトポをサービスとして提供する背景やスタート地点が異なることで、根本的な課題感や考え方が異なります。この違いは、見た目以上に大きな機能や使い勝手の差につながってくると考えています。また、自分たちも当事者だからこそ、次々に課題が出てきます。これを解決、実現するために最もスピードがあるのは、やはり自分たちで作ることだと考えました。
あとは利便性としての機能の問題もあります。日本のデジタルトポとしてはアプリがありません。ブラウザを通して閲覧するという意味では昔からブログで公表されていたりと、Webでは無料・有料含めて存在します。しかしアプリというサービスにはなっていないので、情報は置いてあっても、利便性や機能がないという問題から、情報の利活用にまで至っていません。
加えて、地域と連携してオープンに岩場を運営していこうという流れも増えてきています。有料の岩場も増えています。これまでは利便性の問題もあり、岩場の情報は個人間で無料で交換されることも多かったですが、デジタルでいつでもどこでも情報を購入することができるようになれば、必要なお金を払って利用したいというクライマーも少なくないと感じています。
SCAの活動に関わっていることで、手始めにそのトポの有料化からスタートします。トポを購入くださると自動的にSCA会員となり、購入された費用からSCAの会員費用が支払われることとなります。SCAでは年間の会員費用を3,000円に設定しています。TOPOSでの課金を1年間継続いただくと、SCAはこれまでと同様の3,000円が年間の収入として入ることとなります。SCAではこれまで会員費の徴収を銀行振込という手段でしか対応できず、また、会員期間も年間の中で特定の一日をスタート日とした運用となってしまっていました。会員になる日によって同じ金額で期間の差が生まれていました。こういった状況がTOPOSを利用することで、アプリ決済が利用でき、いつでも会員になることができるようになります。通信回線の決済機能で支払いも簡単になり、入金確認からのトポの提供などの管理業務も不要となることで、トポへの即時アクセスもできるようになります。こういった効率化は、表に出ないところですが、現実問題としてのローカル団体の運営にかかっている負担を軽減します。こういったインフラがあることで、デジタルトポデータを用意さえすれば、すぐにでも会員の仕組みを開始することもでき、今後の岩場の新しい開拓や維持管理の活性化につながっていくと考えています。
そして繰り返しになりますが、既存の紙で出版されているトポも、時間とともに情報に変化がある中で、それを保っていくためのプラットフォームにもなり得ます。これを早く当たり前の世界にすることで、更新が必要な情報に関しての信頼性を高め、引いてはオリンピックも控え益々盛り上がりを期待したいクライミング業界に貢献したいと願っています。
TOPOSが見るビジョン
TOPOSは広告モデルではなく、サブスクリプションを中心に、コンテンツやサービス自体へ課金してもらえる世界観を目指しています。TOPOSをダウンロードしていただけたら是非一度「赤嶽」で検索し、ページをご覧ください。赤嶽自体もまだまだ情報が充実しているとは言い切れないですが、自分たちも関わる岩場として1つのモデルケースになるように情報を入れています。「宿泊・その他」「おすすめ」というセクションがあります。ここでは実際にクライマーとして小豆島を訪れ、体験して思い入れのある施設を紹介しています。広告モデルとしてしまうとこういった紹介ができません。小豆島の場合はSCAという協会があり、実際に地元の協力を得ながら活動しています。ローカル団体として、クライミングに理解を示してくださっていることへの感謝や、知人友人が訪れてくれたときに満足して帰ってもらいたい。こういった関係性や気持ちを表現できる場でもありたいと考えています。クライマーが編集者の雑誌のようなものでもあり、手紙のようなコミュニケーションでもあると考えています。
こういった背景のある情報が集まれば集まるほど、情報の場の価値は高まっていきます。「さあ、次はどこの岩場にいこう」とツアーを考えているクライマーにとっても、ツアーの期待を膨らませる楽しみにもなると思います。縁も広がります。
クライミングを媒介してこういったつながりが世界に生まれたらとてもたのしいと思います。このつながりを国内からアジア、そして世界へと広げていきたい。クライミングを通じて人生をエンパワーし、新鮮で好奇心に溢れ、充実した人生を増やしていきたいと考えています。
デザインについて
長く利用されるインフラを目指すためにTOPOSではデザインを大切にしています。この想いから、ロゴやアイコン、イラストは著名デザイナーの「ハイロック」氏に依頼・作成いただきました。
スマートフォンの画面では世界的なサービスのアイコンと同列に並べられてしまいます。その中でも遜色なく画面に存在するようにと、何度もブラッシュアップしていただき、最終的にシンプルで明快なロゴが生まれました。
ハイロック(アートディレクター)
NIGO®︎氏に師事しアパレルブランド「A BATHING APE®」のグラフィックデザイナーを経て独立。20年に渡り東京・裏原宿の一大ムーブメントの中心で過ごし、ストリートカルチャーから学んだ遊び心を活かしたロゴ、グッズ、アパレルデザイン、空間デザインなどその表現は多岐に渡る。
TOPOS(トポス)という名前
ここまでお付き合いいただきありがとうございました。最後にTOPOSの名前についてのご紹介させてください。このアプリを広く親しんでもらいたいと考え、格好良さのようなもの以上に、端的にわかりやすいことに重きを置きました。トポを扱うものとして、最もわかりやすい言葉はやはり「トポ」そのもの。だからその集合体として「TOPOS」としました。その上で、複数形としての読みではなく「ス」と読みます。これでトポの語源であるギリシア語になります。トポスには、場所の意と、そこに身体性を伴うニュアンスがあり、トポの集合体では情報だけですが、そこに身体性を伴うことで、血の通ったクライミング文化を支える場になりたいという想いを重ねています。
クライマーの皆さまへのお願い
TOPOSをダウンロードして画面でご覧いただくと分かる通り、今はまだ岩場や課題のインデックスとしての情報にとどまっています。「日本100岩場」シリーズはトポのイラストの著作権の関係から同様の画像を準備中でこれは順次追加されますが、いずれにしても、岩場の全景的な写真や壁・岩の写真、課題ごとの写真などがないため、これをつのらせていただきたいと思います。また、岩場の追加情報や修正情報があればご指摘ください。
問い合わせ窓口を以下にご用意しました。ご連絡をお待ちしております。
<お問い合わせ先>
※山と溪谷社およびTOPOS運営チーム(Sunborn)まで届きます。
文責:株式会社Sunborn 北原 豪